私の目指す「書」とは、先達の辿った史跡とそこから生み出された作品から「書の本質」を学び、「歴史」と「独創性」を体現することです。
昨今もてはやされる「筆文字」の”パフォーマンス”に陥ることなく、人類の英知ともいうべき「書の歴史」とそれを生み出した風土への探究を怠ることなく、独自の作品を生み出していきたい。
そのために、私は、多くのことを学び柔軟で新鮮な感性を持ち続け、さまざまな表現方法を試みたいと考えてます。
【主な活動】
・書作
・篆刻
・立体書制作
・書道史研究
・執筆活動
・普及指導
【龍虎】
龍虎は、力量の伯仲した二人の強者に例えられる。
この作品は、龍を草書、虎を古代文字(甲骨文)を基にして、天上から飛びかかる”龍”と、地上で力を漲らせて待ち構える”虎”との対決の場面を表現しました。
単純明解で、理屈抜きに楽しめる作品です。
篆刻は「書」の一表現です。
かつて、書作・篆刻・絵画・詩・金石学などの「書」にまつわる表現技法は、ひとりの作家が創意工夫の基で自在に制作発展してきた伝統があります。
現代の書の世界では、個々ジャンル分けされて「書」そのものの自由度が減ぜられる傾向にあるのではなかと考えております。
私は、「書」の原点に立ち返り、篆刻の団体には属することなく独自の作風を追求してきました。
そのなかでも、篆刻の呉昌碩などは最も尊崇する印人。
「書」の立体化という発想から、陶芸によるいわゆる「陶書」として独自の世界を創出しました。
その後、陶芸だけでなくさまざまな素材に取り組み、「立体書」を制作してます。
「立体書」は、書を飾る床の間が少なくなってきた現代家屋でも身近に「書」の世界を感じることができ、また色彩豊富な作品が制作可能なことから、世代を超えて幅広く生活に溶け込める作品となっております。
一見すると、工芸のように見える「立体書」ですが、根底にあるものは「書」としての”心”です。
【龍】
龍は想像上の動物で四霊のひとつ。天子やすぐれた人に例えられることもあります。
この作では、古代文字(金文)をもとにして、どっしりと立つ力強い龍を表現してみました。
彩色は金色の箔を用い、その中に点在して見える赤は下地の色で、龍の生命力と気魄を表し、金色は格の高さを象徴としています。
頭上のガラスは、金文の初画部分に相当し、龍の角として表してみたものです。
【鳳の舞】
古代中国(殷)では、風は神鳥の羽ばたきによって起こると考えられていました。神鳥は鳳(おおとり)の象形を借用して「かぜ」の意を表しています。
この作品は、甲骨文「風」をもとにして鳳の舞(まい)を簡素な細線で立体表現してみました。甲骨文にも見られる頭部の冠は、金線とスワロスキーで表し、本体は緑色系を主に15種類の具材で彩色。前後左右に伸びていく細い曲線は、春に芽吹いていく若木の生命力を表わし、それらの線の間から見えてくる立体空間も楽しい一品となっております。
「書道」は、学問として探究しつつ、きさまざまな表現技法を駆使する「総合芸術」であると考えます。
由って、私は、「書」というものは書道史・字源などの文字学の知識を基に「文字」を扱う作業であるという基本姿勢基づき、「書」の源泉を求める「字源研究」や、志賀島で発見された「金印」等の「歴史研究」に努めてまいりました。
「天發神識碑の筆法と筆記具についての一考察」